ハテナくんとおにいさんの
-第3回-
「さあ、第3回はじまるよー!」
「一瞬、変なコーナーが入っていたね」
「変なって、お料理コーナーだよ」
「僕のいない間に調子こいてんじゃねえよ」
「わあ、卒業後の先輩みたいだね」
「うん、使ってみた」
「なんかカッコイイね」
(そうかなあ……)
「というか、あんまり久しぶりなんでキャラクターを忘れかけているんだよ」
「それは困ったね。 でもおにいさんはそんな言葉は使わない人だよ」
「……語尾に『ヤンス』とかって、使ってたかな?」
「使ってないよ」
「……そうでヤンスか?」
「だから使ってないってば」
Q4.
おねえさんに質問です。
外国語には「定冠詞」と「不定冠詞」というヤツが存在することがありますが、両者は概念的にどう違うものなのでしょうか?
1.日本語では、冠詞を使わずに「助詞」を使う
2.ロシア語では「格」を使い、ロシア語を学ぼうとするものを混乱のドツボに陥れようとすること
3.もしかしたら、「竹原フミ」なる女性は私が某国諜報機関にいた頃に追いかけていた、コードネーム「シベリア空想旅団」かもしれないこと
以上の点を踏まえてお答えいただければ災い転じて福となします。
(らむたらさん)
「という訳で君への質問だ」
「うーん、難しいな」
「おねえさん、外国語は話せるの?」
「……一応」
「君の『一応』の水準の低さは、料理の話でばれているけどね」
「いや、あれは、ちょっとした操作ミスよ」
「料理の、操作?」
「料理は良いでしょ、もう。 外国語は使えるわよ。 でも定冠詞とか、そういうのは考えた事がないのよ」
「結論が早過ぎるよ。 質問してきてくれた人も浮かばれないよ、それでは」
「そんな事言われても」
「嘘でもまともっぽく答えてあげないと」
「おにいさん、ウソついちゃダメだよ!」
「あ、そうなんだ。 それは知らなかったよ、5年間」
「……」
「うーん、……情報の発信者側と受信側との間で、ひとつに特定できるものには『定冠詞』、できないものには『不定冠詞』を使うって感じかな」
「?」
「日本語にすると、例えば『山の上にリンゴの木がありました』の『が』が不定冠詞。 で、『リンゴの木は沢山の実をつけていました』の『は』は、山の上のリンゴの木に特定されているから定冠詞を使う、かな」
「なんとまあ、もの凄く分かり難い説明だね」
「概念と言われてもねえ。 じゃあ、あなたは何て答えるの」
「これは君への質問だ」
「……と、とにかく、ロシア語の『格』にしてもそうなんだけど、外国語ってのは話す所から始めた方がいいよ。 日本人が助詞を意識せずに日本語を使っている様に、ネイティブな人にとってはどうでも良い文法なの。 だから実際にロシアにでも行ってコミュニケーションから覚えた方が上達は早いのよ。 フィーリングよ。 重要なのはその言葉に対する愛なのよ!」
「わあ、なんかすごいね」
「うん。 人間困った時は『愛』だからね。 万能の正義が『愛』。 愛がすべてさってハウンド・ドッグも言ってたしね。 鷹司は学生時代に音楽の授業で合唱させられて吐き気を覚えたらしいし。 『ピアニシモ』だっけ?」
「『フォルテシモ』だよ。 古いね」
「まあ、そういうことです」
「旅団の話はいいのかい?」
「旅団?」
「シベリア空想旅団。 通称『シベ空』の話は」
「水野晴郎の映画みたいだね」
「そんなの、知らない」
「……ああ、そういう事か」
「ああ、また勘違いしてる……」
「おにいさん、『シベ空』って何?」
「では僕が代わりに。 『シベ空』ってのはソビエト連邦時代に活動していた12人の暗殺集団だよ。 冷戦時代の闇に紛れて、社会主義と母なるロシアの大地の為に各国の要人を葬り去ってきた。 スターリンが作ったとも言われているけど、定かではない。 11人のロシア人と、1人は東洋人だと聞いているけど?」
「何でそれが私なのよ」
「怖いね。 今もあるの?」
「ペレストロイカとそれに続く連邦の崩壊によって解散させられたらしいけど、詳細は分からないね。 何人かは処刑された様だけど、ロシア政府に用いられたとか、諸国の野に下ったという噂もあったね?」
「何で私に聞くのよ」
「……ゴルビーの頭のアザって、君が付けたんだっけ?」
(参考:ミハイル・ゴルバチョフ)
「知らないってば、こんなオヤジ」
Q5.
一寸古い話ですが、「人間なんて、ラララ・ララララーラー」のラは伏字って事なんですか?だとしたら伏せられている歌詞は何なんでしょうか?書類提出の締め切りが迫っていますので至急お答え頂けませんでしょうか?
(桃缶さん)
「わあ、締め切りが迫っているんだって、早く答えてあげないと」
「そうだね。 3ヶ月も放っておいたけど」
「じゃあ急がないと」
「正確には『人間なんて、ラララーララララーラー』だね」
「『ラ』に隠された歌詞って?」
「うん。 『人間なんて、真夏ーの夜のゆーめー』だよ」
「わっ、即答だね」
「急がないとね」
「キレイな歌詞じゃない。 何で伏せたの?」
「儚すぎるからね。 でも詳しい事は吉田拓郎に聞いてくれないと」
「その歌が使われてるCMもあったね」
「古いね。 転職か、アルバイトか、そんなCMだったと思うけど。 むしろこっちの方が有名になって拓郎ないがしろだね。 後の歌詞はもっと救われないものだった」
「やっぱりそれ関係のCMだから、儚い歌を使ったのかな?」
「そういう意味も暗に秘めていたんだろうね。 でもあんまり大っぴらに言うと、仕事なんてそんなもんと言ってるようなもので、問題あるだろうから『ラララ』の部分で止めておいたんだろうね」
「仕事なんてそんなものなのにね」
「まあ、あの業界も色々厳しいみたいだしね。 昔、桃井かおりか誰かが『世の中、バカが多くて疲れません?』と話すCMがあったけど、視聴者のクレームを受けて、『世の中、お利口が多くて疲れません?』に変わったり、最近では松島菜々子がすべり台から中学生に蹴りを入れるお茶のCMも、あっという間に消されちゃったしね」
「怖いね」
「そんな訳で、ラララの話はそういう事だよ」
「解決して良かったね。 締め切りに間に合うのかな?」
「でも、『真夏ーの夜のゆーめー』でもいいと思うけどなあ」
「そうだね。 僕も上手く思い付けたものだよ」
「え!?」
「じゃ、今回はここまでだよ。」
「グダグダっぷりに拍車が掛かってきたね、いよいよ」
「そういう事は言わなくていいよ、ね、おねえさん」
「……面白いのかな、これ」
「知った事ではないね」
[つづく]