ハテナくんおにいさん
21日−





ハテナくんおにいさん。」

おにいさん「・・・。」

ハテナくんおにいさんってば!」

おにいさん「・・・ん、ああ、どうしたんだい? ハテナくん。」

ハテナくん「ボーっとしちゃって、何考えてたの?」

おにいさん「・・・うん。 どうすれば世界人類が平和になるかなと考えていたんだよ。」

ハテナくん「・・・珍しい事を考えていたんだね。」

おにいさん「ありきたりの事を考えていても、つまらないからね。」

ハテナくん「それで、結論は出たの?」

おにいさん「・・・うん、やっぱり僕は行く事にするよ。」

ハテナくん「ドコへ?」

おにいさん「ローソン。」

ハテナくん「何で?」

おにいさん「やはり爪切りが無いと色々と不便だからね。 爪はもとより、プラモデルも造る上でも。」

ハテナくん「・・・世界人類の平和を考えた結果が、爪切りを買いに行く事なの?」

おにいさん「そうだよ。」

ハテナくん「全然分からないよ。」

おにいさんハテナくん、君はすぐそうやって考えるのを止めてしまう。
例えば、脳に重大な障害を持っているならば、本人も制御出来ない為に、
本能や乱れた電気信号によって不可解な行動を起こす事もあるけど、
そうで無い人間ならば、どんな些細な事でも、その前段階で意識の働きかけがあるんだよ。

そうなると、他人であっても、相手の行動の理由を理解する事だって出来るはずだよ。
更に僕は目的の為の『きっかけ』も話しているんだから、
ちょっと考えれば僕の脳内でその『きっかけ』がどの様に変換されて、
行動を起こさせる事を決定させたかを見極める位、造作も無い事のはずだよ。」

ハテナくん「ローソンへ行くのにそんな難しい事しなきゃならないの?」

おにいさん「ローソンしかり、セブン・イレブンしかりだ。
人間の行動に簡単も複雑も無いんだよ。」

ハテナくん「でも僕は人間じゃないから。」

おにいさんそんなジェロニモ(キン肉マン)みたいな事言わないよ。
人間じゃ無いなら、みんなから超人パワー玉を貰えて良かったじゃないか。」

ハテナくん「超人でも無いよ。」

おにいさん「そうだね。でもハテナくんの電子頭脳はどこのコンピュウタにも負けない演算処理能力を有している事を君は知っているかい?」

ハテナくん「そうなんだ。」

おにいさん「ただ、限りなく人間に近く作り上げているから、使用可能領域のほとんどはアクセス不可だけどね。」

ハテナくん「ダメじゃない。」

おにいさん「そんなに自分を責めるのは止めた方が良い。」

ハテナくん「いや、そうじゃなくて。 おにいさんが。」

おにいさん「電卓の分際で、僕を愚弄するのか?」

ハテナくん「・・・」

おにいさん「・・・」

ハテナくん「・・・で、世界人類の平和とローソンへ爪切りを買いに行く理由は?」

おにいさん「おやおや、もうギブアップかい?」

ハテナくん「ゴングも鳴っていないよ。」

おにいさん「じゃあ、おにいさんの不戦勝だね。」

ハテナくん「それで良いから、理由は。」

おにいさん「世界人類の平和の為にはまず自分が平和にならなきゃならない。

ハテナくん「そうとは限らないんじゃない?」

おにいさん「いや、そうなんだ。 自分が平和で無い者による世界人類の平和の為の行動は、
所詮傷を舐め合うばかりの、進歩の無い、卑屈な涙の流し合いだよ。
ここで言う自分の平和とは、安全安楽の事じゃなく、精神的な問題だよ。
キリストも釈迦も自分自身は平和だったんだ。

過酷な旅を続けても、最期に槍で突かれたり、下痢で苦しんでもね。
それで不幸なら彼らも真理を理解出来ていなかった事になる。」

ハテナくん「それで、自分の平和の為に爪切りを?」

おにいさん「うん。 爪切りの無い我が身の不幸に悲観しつつ、だが明日の平和を求めて僕は歩いて行く事にしたよ。」
たとえこの身が砕け散ろうとも。」

ハテナくん「ローソンへ行くのはもう少し楽だと思うよ。」

おにいさん「そうであれば良いが・・・」

ハテナくん「そうだよ。」

おにいさん「それじゃ、僕は行くよ。 命があればまた会おう。 だがこの生命の灯火が消えようとも、君は悲しんではいけない。
人間は産まれた時から死刑台への十三階段を一歩、また一歩と登り続けているからね。 畢竟万人に訪れる不可避の・・・」

ハテナくん「良いから行って来なよ。」

おにいさん「言われるまでもない。」

ハテナくん「爪切りを買ったら、今度は世界人類の平和の為に動くの?」

おにいさん「その頃には空腹を覚えていよう。 僕はいつまで経っても不幸という名の十字架を背負って・・・」

ハテナくん「分かったよ。」

おにいさん「では、さらばだ。 だが最後はこの言葉で締めくくらせて貰うよ。 再見!(ツァイツェン)」

ハテナくん「・・・」

































ハテナくん「・・・ついて来て欲しかったのかな?」




パセリ君「お邪魔致します。 ・・・おや、あの人は外出中ですか?
それでもこの話が続いている所をみるといよいよ僕の長きに渡る
伝説の第一歩が・・・」

ハテナくん「・・・ついて行けば良かったなぁ。」

パセリ君「ああ! オチを付けるんじゃない!!」


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