おにいさん「おや? なんだい、その有機体は?」
ハテナくん「えへへ、可愛いでしょ、ネコだよ。」
おにいさん「へぇ、作ったのかい。」
ハテナくん「違うよ、拾ってきたんだよ。」
おにいさん「だろうね。」
ハテナくん「ウチで飼うことにしたんだ。 別に良いでしょ?」
おにいさん「君は飼い主に相談無く、動物を飼おうとするんだね。」
ハテナくん「・・・・・」
おにいさん「それにハテナくん、キミは猫の飼い方を知っているのかい。」
ハテナくん「エサをあげれば放っておいても良いんでしょ?」
おにいさん「そんな中年主婦がダンナのいない所で話すような扱いじゃダメだよ。」
ハテナくん「でも、おにいさんの言うことも、なんだかアテにならないからなぁ。」
おにいさん「おや、僕の説明の何が間違っているんだい?」
ハテナくん「こないだモジュラージャックにねん土詰めろと言ってたぢゃない。」
おにいさん「しょうがないだろ、僕がボケ役にまわらないと。 君には出来ないんだから。」
ハテナくん「・・・・・」
ハテナくんとおにいさんの
よくわかる猫の飼い方
Qまず、何をするの?
A
おにいさん「まず、猫に名前を付けないとね。」
ハテナくん「どんなのが良いの?」
おにいさん「古来より猫の名前は、タマかミケのどちらかだね。 うーん・・・」
ハテナくん「ミケにしようよ。」
おにいさん「ミケ・・・タマ・・・マイケル・・・キティ・・・」
ハテナくん「ミケにしようよ、ねぇ。」
おにいさん「・・・チーママ・・・キャンギャル・・・ヘビメタ・・・イッキ飲み・・・・」
ハテナくん「ミーケ、ミケ、ミケにしようよぉ。」
おにいさん「・・・ら抜き言葉・・・リトアニア・・・ハコ乗り・・・リ・ガズィ・・・イソ酵素・・・ソウエト・・・トヘロス・・・数値解析・・・」
ハテナくん「おにいさん、聞いてる?」
おにいさん「・・・聞いているよ。 分かったよ、ハテナくんの言う様に、猫の名前は「エビ固め」にしよう。」
ハテナくん「・・・聞いてないじゃないか。」
Qエサは何が良いの?
A
おにいさん「雑食だから、何でも食べるよ。 エビ固めは。」
ハテナくん「・・・そのエビ固めって名前は、何とかならないの。」
おにいさん「でも大体はスイカやキュウリを与えると間違いないね。」
ハテナくん「そんなので良いんだ。」
おにいさん「あとは樹液。」
ハテナくん「樹液?」
おにいさん「そう、樹液ミツオくんって名前のが市販されているよ(本当)。 驚きだね。 さすがのおにいさんもあのネーミングセンスには脱帽だよ。」
ハテナくん「変わったモノを食べるんだね。 ネコは。」
おにいさん「樹液ときて、ミツオくんだもんなぁ。」
ハテナくん「繰り返さなくていいよ。」
おにいさん「あとサバのみそ煮も好物だよ。」
ハテナくん「え?おにいさんの好物の話だったのかい?」
Qしつけはどうするの?
A
おにいさん「殴るんだよ。 グーで。」
ハテナくん「おにいさん、目つぶしは? 目つぶしは?」
おにいさん「もちろんアリだ。 横から腹を蹴り上げるのも定石だよ。」
ハテナくん「でも、可哀想じゃない?」
おにいさん「恐怖によって徹底的に忠誠を誓わせるんだよ。 その見返りとしてエビ固めが得るのは、完璧に安全な生活の保障と決して危機感を感じさせない莫大な食料だ。」
ハテナくん「食料って、樹液?」
おにいさん「御名答だ。」
ハテナくん「良いことをすると、ほめてあげるの?」
おにいさん「もちろん。」
ハテナくん「頭をなでたりするの?」
おにいさん「普段より軽い力で殴るんだよ。」
ハテナくん「結局殴るんだね。」
Q尻尾はなぜあるの?
A
おにいさん「猫の世界というのはね、僕達が想像しているよりも遥かに過酷なんだよ。」
ハテナくん「そうなんだ。」
おにいさん「エビ固めの様に人間に飼われて、毎日の食料に不自由しない猫なんて、ほんの一握りなんだよ。 他の野良猫は常に戦い、飢えを耐え抜きながら、日々の糧を得ている。」
ハテナくん「で、尻尾の説明はどうなったの?」
おにいさん「故に、非常食なんだよ。 尻尾は。」
ハテナくん「へぇ、食べるんだ。 痛くないの?」
おにいさん「背に腹は代えられないよ。」
ハテナくん「でも、尻尾の無い猫って、カッコ悪いなぁ。」
おにいさん「大丈夫。 また生えるから。」
ハテナくん「ソレはソレで気持ち悪いね。」
Qどこまで大きくなるの?
A
おにいさん「飽くなき食欲は自身を無限に大きくさせ、やがては太陽を飲み込む程まで成長するんだ。 そこで古の神々はグレイプニルという綱をもって、ヤツを終末まで繋ぎ止めておくんだよ。」
ハテナくん「おにいさん、話が変わってるよ。」
おにいさん「え? ああ、猫の話かい。 うん、ある程度までは大きくなるよ。」
ハテナくん「それ以上は大きくならないんだね。」
おにいさん「大きくはならないよ。 サナギにはなるけどね。」
ハテナくん「サナギ? ちょうちょみたいな?」
おにいさん「いや、猫繭(ねこまゆ)という繭を作ってその中でサナギになるんだ。」
ハテナくん「で、どうなるの?」
おにいさん「3週間程で、羽化するよ。」
ハテナくん「羽化って、羽が生えるのかい!?」
おにいさん「そんなに驚くモノじゃないだろ。 ハテナくんだって、見た事あるじゃないか、羽の生えた猫。」
ハテナくん「見たこと無いよ。」
おにいさん「あれ? 見たこと無かったっけ? ウミネコ。」
ハテナくん「アレって、ネコだったの?」
おにいさん「当たり前じゃないか。 猫の成体だよ。 にゃあにゃあ鳴くだろ。 羽も生えてるし。」
ハテナくん「てっきり、鳥だと・・・」
おにいさん「一つ教えてあげよう。 日本語はね、後ろの言葉がメインなんだよ。 あんパンはパンだからパン屋で売っている。 ハチドリは蜂の様に小さな鳥。 スズメ蜂は雀の様に大きな蜂。 だからウミネコは海にの近くで飛んでいる猫だよ。 鳥という言葉すら使われていないじゃないか。」
ハテナくん「すごいね、おにいさん。 本当にそんな気がしてきた。」
おにいさん「ハテナくんも、いい加減無知の知ったかぶりはやめた方が良いよ。」
おにいさん「おや、エビ固めはどうしたんだい?」
ハテナくん「逃げちゃった。」
おにいさん「ちゃんと面倒見なかったんだろ。」
ハテナくん「面倒はみてたよ。 おにいさんの言うように殴ったり樹液あげたりしたよ。」
おにいさん「ふぅん。 おかしいね。」
ハテナくん「どうしよう、おにいさん。」
おにいさん「しょうがない。 エビ固めの抜け落ちた毛からクローンを作ってあげよう。」
ハテナくん「倫理もナニもあったもんじゃないね。」
再生