歴史の隙間で頑張っていた
二代目英雄日記帳


今回の特集は、世界中で活躍した英雄と、
その遺志を受け継いだ三代目との間に生きた、
いまいち地味な二代目をご紹介致しましょう。

隔世遺伝のイタズラにより
単なる遺伝子の運び屋として教科書に載せられた二代目達
しかし英雄・傑物もくたびれ万年課長も一生の長さは同じです。
二代目達にもそれぞれのドラマやトラウマがあった事でしょう。

皆さんはこれから紹介する人物達を知ることにより、
自分ばかりがショボイ訳ではない事に目覚め、
静かにこぶ平の子供あたりを期待して生きてゆきましょう。

あと、ココで書かれているのは全て想像です。 あしからず。


サンプル−1
徳川秀忠
葵の二代
(父:徳川家康、子:徳川家光)
父は戦国時代を制し、統一国家を築きあげた英雄。
子は江戸幕府のシステムを揺るぎなきものにした英雄。

ヒデ日記

−○年1月1日−
今日から日記を付けはじめる事にした。
父上に言えば馬鹿にされるだろうから、内緒でやる事にした。
題名は「ヒデ日記」する。
素っ気ない題名だけど、こうすれば僕が作ったモノという気がする。
父上無しで僕がやり始めた最初の事かも知れない。

−△年2月15日−
どうやら父上が天下統一を成し遂げたらしい。
僕は最近になってやっと知った。
関ヶ原へは僕も参戦しようとしたけど、お腹が痛かったから止めた。
そういえばあの頃から、父上は冷たい。

−□年5月5日−
端午との節句という事で、城内でも盛大に宴が催された。
僕の息子の竹千代が主役だった。
そういえば「竹千代」という名前は、父上の幼名と同じだったはずだ。
勿論息子の名前は父上が付けた。
父上は、ゆくゆくは「家光」と名乗らせるつもりらしい。
悪くない名前だと僕も思う。
家康の孫だから家光。 僕は、秀忠。

−×年8月31日−
この間、父上が亡くなられた。
難しい事は良く分からないけど、テンプラの食べ過ぎらしい。
一瞬ザマミロという気持ちになった。 反省。

−@年10月24日−
実際父上が存命だった頃から僕は将軍だったのだが、
これで晴れて僕の好き放題天下を動かせる事になった。
でも周りが、頭の中まで鎧を着た様な奴らばかりで、どうもうまくいかない。

−#年12月31日−
どうも僕より家光の方が皆に好かれている。
実際成人した奴の聡明さには、父ながら嬉しいが、若干の嫉妬は否めない。
しかし僕が死んでも徳川が安泰なのは嬉しい。
いや、嬉しいのは亡き父上だろう。 僕は実際の話、どっちでも良い。
ただ数百年後の歴史の教科書が気になる。
そういえば、かつての足利家も、初代の足利尊氏と三代の足利義満は知っていても二代目は知らない。
あ、なんかヤな感じになってきた。 止めよう。 「ヒデ日記」も止めだ。


サンプル−2
ルパン2世
猿紳士
(父:アルセーヌ・ルパン、子:ルパン三世)
父はホームズと争った事もある大怪盗。
子はトリッキーな方法で盗んだり盗まなかったりのコメディ怪盗

ルパン・ザ・セカンドの日記

○年1月14日
今日は私の誕生日である。
父が綺麗な馬を買ってくれた。
27人の使用人達が祝ってくれた。
素直に嬉しかった。
父はいつもの様に夕方から仕事へ行った。
そういえば父は何の仕事をしているのだろう。

△年3月7日
最悪だ。
リンゴの万引きで捕まってしまった。
どうもこの癖は直らない。
警察が僕の家を見て仰天していた。 無理もない。
リンゴの木なんて我が家の敷地内にごまんとある。
しかし私にとってはリンゴではなく窃盗という行為が重要なのだ。
ともかく最悪の気分だ。
完璧な紳士である父に申し訳ない。

□年6月6日
カボチャ泥棒で捕まる。

×年9月27日
父が亡くなる、酷く悲しい。
紳士の父にコソ泥の息子の構図は拭いきれなかった。
莫大な遺産が転がり込んだ。

@年10月24日
息子が産まれる。
何だかサルみたいだ。心配だ。

#年12月31日
息子が宝石を盗んだらしい。
リンゴどころの騒ぎじゃない、捕まらなかったから良かったものの。
誇りあるルパン家に泥棒の血が発生し始めたのかも知れない。
原因は間違いなく私だろう。 紳士の固まりだった父に申し訳ない。
気が滅入る。 日記はもう書かない事にする。


サンプル−3
金田一宗助
名前は想像
(父:金田一耕助、子:金田一一)
父は様々な凄惨な事件を解決させた名探偵
子は少年ながら警察お抱えの名探偵

ろくでなしの日記

○年1月8日
今日も警察が家に来て、親父と何やら話し合っていた。
放蕩親父の癖に変な才能があるからやたらと重宝されている。
しばらくしたら、親父が頭をボリボリ掻きながらうろついていた。
とりあえずあの小汚い格好だけは何とかして欲しい。
その後、何とか島へ事件の解決に出ていった。
なかなか帰ってこなかった。
そんな島は聞いた事がない。

△年4月20日
親父はしばらく帰っていない。
何とか墓村へ事件の解決に行っているらしい。
そんな村は聞いた事がない。

□年6月17日
近所の飼い犬がいなくなった。
親父は例によっていないので、俺が探してくれるように頼まれた。
無茶な注文だが、一生懸命考え、犬はもうどこかで死んでしまっているという結論に達した。
飼い主は泣いて悲しんだ。 俺は諦めるように慰めた。
その次の日、犬は平気な顔で帰ってきた。

×年9月30日
親父が死んだ。
警察やら世話になった人やらが弔問に訪れた。
意外な程の盛況ぶりで驚いた。

@年11月1日
息子の一が小学校へ通いだした。
普段は普通の子供なのに、時々とんでもない発想を弾き出してビックリさせられる。
多分親父の才能だろう。 気を付けなければ、ろくでなしになる。

#年12月31日
一が警察の推理の手伝いをしているらしい。
まるで親父と同じだ。
しかも時々「じっちゃんの名にかけて!」とか何とか言っているらしい。
その、俺を無視した言動が腹立たしくもあり、悲しくもある。
日記はもうヤメだ。 後で燃やそう。


如何でしたか?

産まれながらにして中間管理職な彼ら、なんと健気に生きておられた事でしょう。
立派な親をお持ちのあなた。
トンビがタカを産んだと評判のあなた。
あなたはそれで良いのです。
立派に役目を果たしておられるのです。
あなたはそのままで良いのですよ。


どっかのブタと同じ事を言いますがね。

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