-色-


「昇りゆく紅」

遠くで煙が鳴り響く
はしごは止まらない
君は帰れない

鉄のイルカがにらんでる
あらゆる鳥が歌い出す
堅めにゆでたウソの街
瞳の奥で血を流す

ランプが輝いたあの日から
今日でちょうど80年
タバコに火を付けたこの日から
今日でついに12年

ガラスの月、落ちて行くままに
ななめの街、燃えて行くままに
時計の針、 戻らないままに
昇りゆく紅、眠らないままに

サビた天使がにらんでる
俺の右手が動き出す
すべてが終わった昨日から
すべてが始まる明日まで

パンドラの箱が開かれて
昨日でちょうど4千年
ヘビにリンゴを受け取って
明日でついに2千年

ガラスの月、落ちて行くままに
ななめの街、燃えて行くままに
時計の針、 戻らないままに
昇りゆく紅、眠らないままに

近くで紅色流れ出す
エレベータは止まらない
俺は戻れない


「堕ちてゆく白」

とてもきれいな世界があると
夢見心地で君が言う
ガラスで出来た理想の世界

空の向こうに見えている
シャボン玉が浮いているよと
寝ぼけまなこで君が言う

消え入りそうな理想の世界
鏡の裏に写っている
天国へ続く塔の中
君の後ろを歩いてた
君が入ったその時に
幻想世界は崩れ出す

とてもきれいな世界があると
ナイフを持って僕が言う
壊しはしないよ理想の世界

君の背中が目に入る
シャボン玉が浮いているよと
見上げてごらんと僕が言う

崩しはしないよ理想の世界
君は微笑み僕を見る
天国へ続く塔の中
君の背中に突き刺した
君が着ていた白いシャツ
幻想世界は血に染まる

僕が開いた白いドア
幻想世界は僕のもの



「回転する青」

闇に紛れた小さなウミネコ
とても大きな4つの耳が
割れた瞳にはっきり写った
翼を取られた白いヤドカリ
とても小さな7つの針が
僕の背中にしっかり刺さった

ああ宇宙からの命綱
どうやら首から離れたようだ
微妙に歪んだ運命の輪
明日の天気が崩れ出す

空に浮かんだ狂ったクジラ
消え入りそうな右手左手
小さな胸に引っ付きそうだ
世界を見つめる神秘のヒトデ
吸い込まれそうな3つの口が
切れた脳に流し込まれた

ああ天国からの贈り物
どうやら君から離れたようだ
3分6秒の砂時計
もうすぐ奴がやってくる
緑の目をした青い黒猫
右から左へ夜になる


「混じり合う黒」

鏡の向こうで広がりだした
ゆっくりゆっくり少し激しく
みんなみんな飲み込みはじめた
それは完璧そして完全
一部のスキも無い程に
赤も青もそして黒も
つけいるヒマも無いままに

土が腐り風が止み
すべてが重なり混じり合う
たった一つの黒の中
ぼくらはやっと落ち着いた

テレビの向こうで広がりだした
回転しながら昇りゆく
堕ちてそのまま動かなくなる
隣の国もまわりの人も
一つのミスも無い程に
上下左右前後斜めも
君も僕も無いままに

太陽が消え月も消え
混じり合って消えてゆく
たった一つの黒の中
僕らはやっと眠り出す


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