the shadow of silver
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7月31日(火)
[本日の独言(ひとこと)]
弊著『バジリスク』は謎の寄生生物に操られた人間の話だが、このアイデアは社会で起きる不可解な犯罪の動機を想像している内に思いついたものだった。現実はミステリ小説とは違って動機が不明な犯罪が多く発生している。それらの謎を明かすものとして、寄生生物に取り付かれて犯罪を起こしたという風にしたのだ。

いささか眉唾物の話だが、猫から人へと感染する寄生虫として有名なトキソプラズマについて、感染した人は起業志向が強くなるという研究結果があるらしい。寄生虫がお金を貸してくれるのではなく、脳やホルモンに作用して感染者はリスクの高い行動を取るようになるというのだ。カマキリとハリガネムシや、カタツムリとロイコクロリディウムのように、虫の脳を支配して行動を促す寄生虫はよく知られている。人間も知らないうちに操られている可能性もあるだろう。

また近年よく聞かれるキーワードに腸内細菌という言葉がある。細菌とはいえお腹の調子を整える大切な生物だが、実は胃腸だけでなく性格にも影響を及ぼしているという研究もあるそうだ。マウスを使った実験によると、腸内細菌を意図的に取り除いたマウスは非社会的な行動を取るようになったという。腸内細菌は脳に続く第二の脳、あるいは脊髄に続く第三の脳と呼ぶ人もいるようだ。

腸内細菌が人の性格を変えるかどうかは分からないが、お腹が痛いとやる気がなくなるというのは、とてもよく分かる。人間は思ったよりも虫や細菌に支配されているのだろう。ちなみに私は数か月前に病原性大腸菌に感染したせいで、一時、腸内細菌がごっそり全滅したように思う。今は多分元に戻っているだろうが、あの時他人の腸内細菌を移植していたら性格が変わっていたかもしれない。やりたかないけど。

[一日三報]
[CNN] 麻薬探知犬の首に700万円の「懸賞金」、犯罪組織が発表 コロンビア

麻薬探知犬は人間もロボットにもできない仕事をこなす優秀な犬だ。
そのため人間もこの犬を、ある意味人間以上に信頼し、厳しさの中にも愛情を注ぎ、表彰し、その死を悼み、惜しみない敬意を込めて接している。
その活動が間違いだとは思わないが、こういうケースが生じるとなると、やはり人間の我が儘に付き合わせているだけのような気もして不憫に思える。

[朝日新聞] 居眠りさせないオフィス開発へ まぶた監視→室温下げる

未来はAIとロボットに仕事を任せて、人間はそれを監視するだけの時代が来ると思っていたが、どうやら実際は逆の使い方をすものだったらしい。
AIに人類は皆マゾヒストであると誤解されないか心配だ。


[Gigazine] 雨が降った時にふと感じる独特の匂いの正体は一体何なのか?

なんとなく地面の土がどうにかなって匂ってくるものだと思っていたが、実は複雑なプロセスを経て発生するものらしい。
でもこの記事を読んでも、人に聞かれたら、要するに土の匂いだと答えると思う。



7月24日(火)
[本日の独言(ひとこと)]
電車通勤の仕事ではないので、電車に乗る機会は限られている。祝祭日を除くと大阪や京都で打ち合わせのある時や、自動車で行けない場所へ取材に行く時くらいだろう。学生の頃もあまり電車通学を経験していない。会社に務めていた頃は、満員電車を嫌って会社の近くへ引っ越した。

毎日利用していないからこそ変化に気づくこともある。たまに乗車して思うのは、みんな本当にスマートフォンばかり見ているのだなということだ。老若男女、電車に乗るとじっと手元を見つめている。たまに騒いでいるのは外国人の観光客か、平日から優雅に国内旅行を楽しむ中年女性のグループくらいだ。一人でいる者は大抵寝ているかスマホで遊んでいる。インターネットでニュースを見たり、誰かにメッセージを送ったり、音楽を聴いていたり、映像を観ていたり、ゲームをしていたり。文庫本を読んでいる人は少なく、電子書籍を読んでいる人もあまりいない。電子漫画を読んでいる人は多い。そして私が見て回っていることに気づいている人は誰もいなかった、多分。

結局、スマホのお陰で電車内でもできることが増えたのが大きいのだろう。スマホのない時代は寝るか新聞を読むか本を読むくらいしか暇潰しの手段がなかった。それがなんでも持ち歩けるようになり、また大人が漫画やゲームを楽しんでいてもおかしくないようになった。いやいや、今では信じられないが、ほんの三十年ほど前は大人が少年ジャンプを読んだりゲームで遊んだりするのは格好悪くて恥ずかしいというイメージがあったのだ。ペットボトルから直接お茶を飲むことは「ラッパ飲み」と言われて下品とされていたのだ。そもそもお茶を、買って飲むなんて、とも思われていたのだ。水筒があるじゃないかと。

まあそんなこんなで、電車に乗る人がそれぞれ好きな遊びを楽しむようになったので、車内で本を読む人も少なくなってしまったようだ。読みなさいなんて言う気もないが、結果的に書籍全体の売り上げが落ち込んでいるのはなかなか辛い。電車というのは実は読書の普及に相当貢献していたのだろう。

前置きが長くなったが、本日、弊著の新刊 『ハイエナの微睡 刑事部特別捜査係』 が発売されます。さっくり読めて楽しめるお話なので、電車内での読書にもお薦めです。その際にはブックカバーを外して表紙を晒して宣伝に協力していただけると嬉しい。車内で娯楽調査をしている私が発見したら、直接お礼を述べさせていただきます。いや毎度ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

[一日三報]
[ナショジオ] 木星に12個の新衛星、1個は「幹線道路を逆走」

今日の木星わくわく。
これで木星の衛星は全部で79個発見されたとか。
有名な四大衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ、カリスト)の他にも多くの衛星があることは知られていたが、そんなにあるとは知らなかった。
これ以上増えると、そろそろギリシャ神話にちなんで名付けるのも限界があるかも。
ちなみに現在、木星の衛星の中で愛称が決まっているのは、50番目の衛星「ヘルセ」までとか。
これもゼウスとセレーネーの娘の名前らしいが。
主神の好色度合いが試される事態だ。

[産経新聞] ネッシー伝説に終止符!? ネス湖の生態系をDNA解析、来年公表

みんな大好きネッシー。
たぶん世界で一番有名なUMA。でも存在しないと、ドラえもんのズル木くんも言っていた。お前もいないことにされてんじゃん。
この記事で一番驚いたのは、湖沼で採取したDNAの分析結果を、たった半年後の来年1月に公表するということ。
科学分野もスピードアップしているようで。

[ロイター] 米ギネス記録王、お腹の上にのせたスイカ切断で新記録

ギネスブックって人類や自然において何か凄い記録を紹介し、競い合う場だと思っていたが、どうやら体を張った一発芸を、思いついた者勝ちに掲載する場に成り下がったらしい。
その内やんちゃなネット配信者がごっそり掲載されるかも。
ユーチューバー改めギネスブッカー。



7月17日(火)
[本日の独言(ひとこと)]
皮膚がんの発見に繋がる手段として、ホクロが良性か悪性かを見分ける診断あるが、その検知能力において人間の医師よりもAI(人工知能)のほうが優れているという結果が報告された。AIには10万枚以上の画像を使って病変の特徴を学習させたらしい。判断方法は画像を使った認識のみに限られているが、その点においては人間よりも正確な診断を下せることが明らかになったようだ。

AIやディープラーニングはもはや複雑に進化し過ぎて、私もあまり説明できない。ただ膨大な事例データと照らし合わせて、目の前の状況を素早く判断させるという能力においては、人間よりも断然優れているのは分かる話だろう。この能力は医療分野に限らず、近年は都市部における交通網の整備などにも活用されている。たとえば過去に発生した自動車事故や渋滞などの発生データを用いて改善点を導き出し、さらにはその先の結果などの予測もできるようになる。先日西日本を襲った豪雨とそれによる河川の洪水は街に甚大な被害をもたらし、今も復興活動が継続しているが、その予測や今後の対策などにも利用できるところはあるだろう。

またAIは警察の捜査にも活用され始めている。地域における過去の事件や事故の発生データを用いて、今後の発生を予測することなども可能となりつつあるようだ。この分野ではアメリカが一足先を進んでいるが、日本も2020年の東京オリンピックを目標に力を入れ始めており、一部では既に実用化されている。いわば「AI刑事」といったところか。未来のロボコップはデトロイトの暴徒を鎮圧するロボット刑事ではなく、戦う前から事件を起こさせない存在になるのではないかと思う。

一方で「AI刑事」が生まれると「AI犯罪者」も現れるのが定石というのものだ。警察対犯罪者、両者のAIが事件を起こして捕まる時代が来るかもしれない。その場合、どちらも足手まといになるのは人間になりそうな気がする。そういう警察小説もそろそろ出てくるかもしれない。面白いかどうかは分からないが。

弊著新刊の『ハイエナの微睡 刑事部特別捜査係』(7/24発売)は、まだそこまでには至らない人間同士の作品です。どうぞ安心してお楽しみください。

[一日三報]
[産経新聞] 人間より公平?法曹界で進む人工知能活用 「AI裁判官」は生まれるか

人工知能の使い方。
制度的にはいいことだと思うけど、倫理的にはどうかと思うこと。
社会の判断を人工知能に任せるということは、人間が社会そのものを放棄することにも繋がりかねないかと。

[WIRED] ロボットは人間の仕事を奪わないが、やりがいは失われていく

ロボットの使い方。
やっぱり分からないのが、なぜ人間がロボットに仕事を奪われる、壊されるとなってしまうのか。
ロボットに全部任せたら、人間は遊んで暮らせるのではないか。
そうでなければ、なぜロボットなど作るのか、という話。
そうはならないのだろうけど。

[ITmedia] スピーカーの音でHDDが故障 「ブルーノート攻撃」で考える物理的対策

超音波攻撃みたいな話。
そういや昔に子供向け番組であったみたいに、超音波で人間をおかしくさせたり操ったりする方法って最近聞かないね。
電波が電波がって人はいるけど、あれがそうなのかしら。



7月10日(火)
[本日の独言(ひとこと)]
お待たせしました。
新刊のご案内です。

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『ハイエナの微睡 刑事部特別捜査係』

著者 椙本孝思
出版 角川文庫
定価 734円(本体680円+税)
発売日 2018年07月24日

紹介ページ(KADOKAWA)

(あらすじ)
警察官猟奇殺人事件の真相とは。警察小説×驚愕のどんでん返しミステリ!

宗教都市・深石で、奇妙なバラバラ死体と、冷蔵庫に押し潰された変死体が発見された。被害者はともに刑事。捜査一課の佐築勝道は、両現場で見つかった不気味な意匠の社章から、ある地元企業の関与を疑う。しかし理不尽な組織の力学と謎の圧力が捜査を阻み、無邪気な少女が勝道を悩ませる。サバンナのごとき先の見えない猟奇殺人捜査。刑事がたどり着く驚愕の真相とは!? ラスト40ページで世界が一変する衝撃の警察小説。

「微睡」と書いて「まどろみ」と読みます。初めての警察小説。表紙もタイトルもがっつりハードボイルド。だけど中身は相変わらず……仕掛けまくっています。発売はもう少し先ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

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[一日三報]
[WIRED] 「最強の昆虫」たちの秘密を解明、超小型で高速なロボットは生まれるか

みんな大好き最強昆虫。
昆虫は人間と同じ動物でありながら、人間とは異なるシステムで発動している。
そんな生物と機械の間のような構造もまた魅力的なのだろうなと。
人間と同じ大きさならどれほど強いのかって話は、仮面ライダーとかテラフォーマーズでやっているので語るまい。

[CNN] 顔の動く腫れを自撮りで記録、正体は寄生虫

割とショッキングな画像。
でもたまに、虫か何か入ってんじゃないかと思うくらい、体の一部が痒かったり痛かったりすることがあるよね。
入っているのかもしれないけど。

[Gigazine] 食卓に間もなく「昆虫」がやって来る

毎年ちょくちょく報じられる昆虫食ニュース。
いつも思うのは、なぜそのままのフォルムを維持しつつ食卓に出そうとするのかと。
なぜ飼育風景を見せようとするのか。
食べさせたいのか、食べさせたくないのか。
食べさせたいならハードル下げろよ。
すり潰してツミレ風にするとか。
それはそれで嫌だけど。



7月3日(火)
[本日の独言(ひとこと)]
少し前に和歌山県串本町の紀伊大島にあるトルコ記念館を訪れた。太平洋を望む岬に建つこの施設は、1890年に発生したトルコ船エルトゥールル号の遭難事件をきっかけに生まれた、同地との友好にちなみ1974年に建設されたそうだ。施設内には同館の模型や乗員の遺品やトルコ政府から寄贈された品物が展示されているらしい。実は朝早くに到着したので中へは入らなかった。

その施設周辺を歩いていると、珍しいウグイスの鳴き声を耳にした。ウグイスといえば「ホーホケキョ」とよく通る鳴き声を発するものだが、その時に聞こえたのは「ホートキメキ」という鳴き声だった。聞き間違いではなく、かなりはっきりとした音で、何度も「トキメキ」と鳴いていた。しかも語尾が上がっているので、文字にすると「トキメキ☆」に近い声だった。

鳥の鳴き声に地方ごとで音が異なる「方言」が存在することは既に知られている。それは雛鳥が親鳥や周囲の鳥の鳴き声を聞き覚えて学習し、自らも発声して受け継いでいくからだ。人間の声真似をするオウムやインコがいるように、鳥は音を聞く聴力と声に出す発声力、さらに音を記憶する脳の処理能力に優れている。彼らは人間以外で唯一、音を受け継ぐこと、いわゆる口伝ができる生物なのだろう。

鳥は人とは違って空を飛んで移動できるが、遠い仲間たちと積極的に交流を持つことはない。お陰で方言は標準化されることなく使われ続けているのだろう。「ホートキメキ☆」のウグイスが本当に方言だったのか、一羽だけの癖だったのかは分からないが、あるいは珍しい鳴き声の野鳥がいるとして観光資源になるかもしれない。

[一日三報]
[産経新聞] インドでサッカー文化が芽生えないわけ ‘宗教’と化したスポーツとは

日本では馴染みないけど、インドではクリケットが圧倒的な人気。
イギリスから流れてきた感じだろうか。
まあ少し前までは日本も野球が宗教だったわけで。
何かのきっかけでコロッと変わっていくものじゃないかなと。
そしてインドのような人口大国がサッカーに興味を持てば、世界的にもなかなか脅威になってくるのではと。

[ナショジオ] 「体内に虫」妄想の難病、10万人に約27人も、米国

今日のバジリスク。
たまに体の一箇所が、虫でもいるんじゃないかと思うほど痒かったり痛かったりすることってあるよね。
妄想に取り憑かれた人が、必ず昆虫やミミズを想像してしまうのは興味深い。
細菌やウィルスとは思わないのね。
たぶん前世に死体を食べられた思い出があるのだろう。

[BBC] 全ての物語の6つの原型 データ分析から解明

まあ何にしても浮き沈みのドラマがないと面白くないわけで。
でも、ありきたりな展開では飽きられるけど、飛び抜けた展開では付いていけない、という感じ。
私は、物凄く何かが起きそうだけど、結局最後まで何も起きなかったという話が書きたいです。